伊豆田子節

2020/9/15

認定日 2020年8月31日
生産地 静岡県賀茂郡⻄伊⾖町⽥⼦地区
生産者 カネサ鰹節商店、他3店舗
生産量 40t/年
生産時期 通年
主な調理方法 薄く削り、お吸い物・味噌汁・うどん・そば・鍋物、現在はラーメンのスープなどにも使われます。
また、ふりかけとして野菜や煮物、お肉料理やお好み焼きなどにふりかけ使われます。最も伝統的な食べ方一つとしては、おにぎりの具材として、薄く削った物をご飯に混ぜて使われます。
問合せ先 スローフード富士山事務局 slowfood.mt.fuji2018@gmail.com

 

食材の特徴

鰹節は少なくとも約400年前から作られ食べられており、日本の食文化には無くてはならない”うまみ”の素です。日本食の素材の味を引き出すのが鰹節。その鰹節の中でも最高級の鰹節が、「本枯れ鰹節」と呼ばれ、現在、鹿児島・焼津・土佐・西伊豆などの限られた地域でのみ作られています。さらにその中でも、西伊豆町田子で作られる「田子節」は、本枯れ鰹節の伝統製法、”手火山式焙乾法(てびやましきばいかんほう)”を確立した鰹節です。製造工程は30以上あり、約半年の手間隙をかけて、専門の職人により、現在も殆んど手作業で作られています。

→ 本枯節って何?普通の鰹節と何が違うの?なまり節や荒節などもあるけど差は何?

「田子節」を作るのに使われる薪は、伊豆の山から切り出された、ナラ・クヌギ・サクラの原木だけを使用し、130度を超える直火で瞬時にかつおの旨みを閉じ込め、凝縮させます。その後、焙乾(薪を燃やし、煙を利用して、いぶして乾燥させる作業)を約10回繰り返して火力で水分を抜いた後、麹菌を使って発酵させ、天日で乾燥させて水分を取り除く作業を6回以上繰り返します。こうして約半年をかけて、丁寧に作られ完成した田子節は、原魚のかつおの1/6の重さになり、かつお本来のうまみを凝縮させた、最高級の本枯れ鰹節です。

原料のかつおは、鰹節作りにつかわれる脂の少ない赤身の部分以外にも、捨てるところがありません。骨の周りは鰹節を作る際に使われるすり身に、内臓は塩辛に、骨は畑の飼料に、脂の乗った腹は塩焼きにして食べますし、頭・骨・身は、煮込んで「鰹色利(リンク)」という調味料になります。

製造工程で出るかつおの煮汁は調味料に、薪を焚いた後に出る灰を水で溶かしたうわず
みは、古くはこんにゃくを固めるのに使われ、灰は地元の畑の飼料になります。こうして、田子節作りは、西伊豆の自然を保つためにも役立ってきました。製造までに時間がかかる為、年間通して作り続けています。最も、需要が高まる時期は、10月~1月の時期です。

歴史的、食文化的位置づけ

伊豆半島の西部、海に面した西伊豆では、1300年以上前からカツオの加工品がつくられていました。現在も作り続けられている最も古いカツオの加工品は、日本の鰹だし汁の起源とも言われる「潮かつお(こちらも味の箱船に登録)」で、その「潮かつお」をはじめとする「カツオの素干しやカツオの塩干し」は、1000年以上の歴史が有ります。

その後、保存方法や加工方法が進化し、変化を遂げて、鰹節が作られるようになり、田子地区で、鰹節の製造方法“手火山式焙乾法”がこの地区で考案され「伊豆田子節」が約300年前に確立しました。更に美味しさと長期の保存を兼ね備えた鰹節、麹菌を使い発酵させた「本枯れ田子節」が約200年前に考案され現在に至ります。

生産を取り巻く状況

日本全体で、本枯れ鰹節の生産量自体が、その製造工程の複雑さと製造までに時間がかかる為、作られなくなってきました。この流れは、加速の一途をたどっています。その中でも、手火山式焙乾法で作られる「伊豆田子節」は、さらに、手仕事で、半年という時間がかかるため、生産する職人自体が高齢化し、若い継承者がいません。

日本人の生活スタイルの変化に伴い、鰹節は削った状態で売られている削り節や、さらには粉末の添加物の入ったインスタント出汁を使うようになり、”鰹節を削る”という行為自体が、貴重なものになり、さらには“出汁をとる”という行為自体が、家庭で料理を作る行程で簡素化されてしまっています。本当の出汁の美味しさを知らない日本の若者も多いのです。

「伊豆田子節」は、本枯れ鰹節の中でも、伝統的加工方法:手火山式焙乾法で作る鰹節です。この製法で作っている鰹節製造店が、西伊豆町田子地区には、かつては40店程ありましたが、現在は4店に減少し、60代の製造者が多く、後継者もいない状態です。

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