祖谷のソバ

2021/11/4

登録日 2021年10月20日
生産地 徳島県三好市東祖谷
生産者 東祖谷雑穀生産組合
生産量 年間約300kg
主な調理方法 〔そば米雑炊〕脱穀したソバの実を粒のまま塩水で煮て干した「そば米」に、菜っ葉、ねぎ、にんじん、大根を加えて醤油で味付けしたそば米雑炊という汁物をつくる。蕎麦を粒食する文化は、日本ではこの地域のみにみられる。

〔そば米のお雑煮〕脱穀したソバの実を粒のまま塩水で煮て干した「そば米」に、サトイモ、豆腐を加えて醤油で味付けした雑煮をつくる。

〔ソバギリ〕石臼で轢いた粉を練って、うった蕎麦をお湯で茹でて、出汁をかけて食べる。

〔ソバダンゴ〕ソバ粉を熱湯で混ぜて、茹でる。小豆あんで食べる。

〔ソバネリ〕ソバ粉に熱い茶をかけて練る

食材の特徴

この地域で代々種継ぎされてきた在来種のソバ。
他の地域のものに比べると小ぶりで、丸みの強い形状をしています。
白い花が咲く品種と赤い花が咲く品種とがあり、実は茶褐色をしています。
ソバとは、ソバの実の三角形で突起がある形状(稜)から呼ばれている名称です。

(栽培環境の特徴)
中央構造線の脆い地質でできた山岳地帯に位置する東祖谷は、過去の大規模な土砂崩れによってできた安息角(30-40°)の土地に集落や田畑を構えました。こうした急傾斜地を常畑化すると雨風等で土が流れ出てしまいます。土壌流亡を防ぐために、刈り取ったカヤ(ススキ)を三角錐状に積み上げ乾燥させて刻み、畑に敷き込みます。同時に、この地域特有の重く鋭い農具を用いて深耕して礫を粘土やシルトにすることで流亡する土を再生産しています。また、独自の農具を使って、流亡した土壌を復元する作業(ツチアゲ)をおこないます。この農法による雑穀生産を続けることで、カヤ場(ススキの草原)という多様な生物の住処や持続的な農業生産が可能な土壌が再生産されているのです。

歴史的、食文化的位置づけ

徳島では、脱穀したソバの実を粒のまま塩水で煮て干した「そば米」で、そば米雑炊という汁物が食べられています。また、祖谷そばという、麺の太さが太いソバも、この地に特徴的な食です。
正月やお祝い事の時には、そば米のお雑煮やソバギリが食べられていました。かつては、ソバの製粉は女性の夜なべ仕事だったそうで、深夜の労働の眠気を払うために「祖谷の粉ひき節」という労働歌が歌われており、現在でも残っています。
現在は常畑で栽培されていますが、かつては焼畑で栽培されていました。

生産を取り巻く状況

東祖谷の地域は少子高齢化が進み、住民もだんだんと減少しています。
世界農業遺産にも登録されたこの地域特有の急傾斜地を利用した農業も担い手が減少し、雑穀生産そのものが衰退していました。
ソバは換金作物として生産されており、この地域のローカルフードとしてそば米や祖谷そばが販売されています。ソバの生産、加工、販売をおこなっている地元の農家が東祖谷雑穀生産組合に加入して、ソバ栽培を継続しています。現在も20名程度の組合員で種を守っていますが、地域の少子高齢化は進む一方で、引き続き種を守る取り組みが必要です。

 

関連記事