伊豆半島の伝統的ところてん

2019/6/18

認定日 2019年6月18日
生産地 天草は現在では静岡県(伊豆)、東京都(伊豆諸島)、三重県、和歌山県、徳島県、愛媛県、高知県、長崎県等で主に採られていて、伊豆諸島、伊豆半島、愛媛県で全国のほぼ6割以上を生産している
生産者 (株)栗原商店/伊豆河童(スローフード富士山会員)、(有)三角屋水産(スローフード富士山会員)、(有)盛田屋、(株)徳造丸、西林商店、他
生産量 伊豆天草は伊豆半島で48トン、伊豆諸島で35トン(令和元年)
生産時期 天草漁は主に5月~7月、ところてん生産は通年
主な調理方法 全国的には各地でタレがちがい、関西では黒みつ、高知ではダシ汁、九州ではポン酢、名古屋では甘酢、そのほかの地域では酢醤油もしくは三杯酢で広く食べられています
問合せ先 スローフード富士山事務局 slowfood.mt.fuji2018@gmail.com

 

食材の特徴

伊豆半島で作られている”ところてん”の多くは、伊豆産の天然の天草と、富士山や天城山系の湧水を使って作られています。
「天草」とひと言で言っても正式にはテングサ目テングサ科であり、マクサ、オオブサが主にところてん用として使用されます。
西伊豆はマクサが多く取られ、俗に女草と言われ柔らかく粘りのあるところてんになります。東伊豆は太平洋にも面していてオオブサが多く男草と言われ太く硬い、シッカリとしたコシのあるところてんになると言われています。
沖にでて素潜りで採る天草のことを沖草といい、逆に岸で拾う天草を寄り草と言います。沖草であればあるほど、品質は良くなります。

・色による区別
天草は他にも、色によって種類分けされています。
水揚げしたものを一度水で洗いそのまま干したものを「赤草」と呼び、磯の香りがでて色が濃いところてんになります。
水で洗い干した天草を何度も水をかけ晒し上げ、天日で干したものは「晒」と呼ばれ、ところてんを作ると色が白くなり、クセがなく食べやすいものになります。
また、採った後すぐさらしたものを「黄晒」、採った後一定期間置いてからさらしたものを「青晒」と呼びます。「とら」と呼ばれる種類もあり、晒の中に赤草が混ざっている、色も食感もいいところてんができる、高級な種類です。

伊豆は主に素潜りで天草漁を行うことが多く、以前はチューブで空気を送りながら長時間天草漁をしていることもありましたが、危険を伴うためと体力がいるために現在はあまり行われていません。西伊豆町には「まんが」と言われる串状の道具で船の上から天草を採る漁も行われています。

歴史的、食文化的位置づけ

ところてん自体は平安時代から食べられていると伝えられていますが、庶民が食べるようになったのは江戸時代だと言われています。江戸時代では夏の涼しい食べ物として食べられました。
伊豆半島では1600年以前より天草漁が行われており、ところてんの原料として使われていました。肥料としても使われていたようです。
伊豆地区では天草漁に力を入れ、志州(現在の三重県志摩市)より多数の海女を雇い入れるなどして収益を高めていました。

生産を取り巻く状況

天草は海女によって採られていますが、近年高齢化が進み、日本一の品質と言われていた東伊豆の稲取では数年前に、唯一だった海女が亡くなり近年は採ることができなくなっています。
ほかの地域も高齢化と過疎化で海女が徐々に減ってきている
このままでは日本伝統の涼味「ところてん」が食べられなくなってしまうと危惧します。
昔ながらの手作り製法で、大量生産ではなく、原材料を豊富に使用し、地産原材料でのところてんを作り続けることが、伊豆天然のテングサと、海女さんをも絶滅させないことだと思います。

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