内藤とうがらし

2020/9/15

認定日 2020年8月31日
生産地 東京都
生産者 内藤とうがらし指定生産者
生産時期 収穫の時期:葉(6月)緑(7月)赤(8月、9月)乾燥(10月以降)
主な調理方法 旨味成分が多く料理、加工品に人気、出汁が隠し味になる。
問合せ先 スローフード内藤とうがらしコミュニティ 内藤とうがらしプロジェクトhttps://naito-togarashi.tokyo/contact/

 

食材の特徴

<植物的特徴>品種は八房種で、実は天に向かってみのり、実がかたまり房状にみのります。現在日本で主流となっているとうがらしの品種は鷹の爪ですが、八房種わずか数%のシェアで、流通ではほとんど見かけません。

<味覚的特徴>辛さは強くなく、90%のシェアを持つ(鷹の爪)に比べ、半分の辛さと言われています。反対に香、旨味、コク、風味があり料理に最適と言われています。江戸時代から内藤とうがらしの葉も(葉唐辛子の佃煮)として愛用されています。青唐辛子、赤唐辛子の生色として料理に使われ、更に年代物の乾燥の「内藤とうがらし」は熟成の出汁として活用されています。

歴史的、食文化的位置づけ

1.内藤新宿の始まり
江戸幕府開設(1603年)の10年前、徳川家康は江戸の街の治安を守るために信頼できる家臣内藤清成に四谷を基地に警備を任せました。見事に治安は安定、無事幕府が開設しました。家康は内藤清成の功績に四谷、大久保、代々木、千駄ヶ谷の周辺約23万坪を清成に授け、それから100年後、江戸が繁栄すると地方との交流が激しくなり、四谷に宿場を建設、新しい宿場(新宿)が誕生しました。この宿場は内藤清成が家康から拝領の土地の一部を当てたことから「内藤新宿」と呼ばれるようになりました。

2.内藤とうがらしの始まり
江戸の繁栄、内藤新宿も活気がつき旅館、茶屋、問屋、飲食、商店などが繁盛します。地域の農家も収穫物を宿場に納め収益が取れるようになりました。中でも在来のとうがらしは人気で飛ぶように売れました。当時、江戸の街は庶民の間で蕎麦が流行っており、蕎麦には薬味として七味唐辛子が使われていました。内藤新宿のとうがらしは香、風味がよく人気で注文が殺到しました。「これはどこのトウガラシだ!ほら内藤新宿のトウガラシだ!」「内藤とうがらし」が新宿の地域名物として定着、内藤新宿一帯の農家は儲かる「内藤とうがらし」を我も我もと生産しました。

3.内藤とうがらしの絶滅
内藤新宿一帯はとうがらしの一大生産地になり、秋になると四谷から大久保方面は真っ赤な絨毯が敷かれる光景だと古文書に記されています。ところが内藤新宿が繁栄すると人口も増え畑が宅地に変わり「内藤とうがらし」生産も叙々になくなり、畑は街道を西へ移動していきました。また、「内藤とうがらし」より2倍辛い(鷹の爪種)が出回ると農家は辛い唐辛子を生産し始めました。この二つの理由で内藤新宿から、唐辛子がなくなりました。

4.内藤とうがらしの復活
全国の地域開発を手掛け30箇所の実績をもつ地域開発プロデュサー(成田重行さん)は事務所が新宿にあり、地域の重鎮から足元の新宿も地域の活性化を是非と言われていました。地域の活性化はまず地域の歴史文化を調べます。特に食文化、食材、昔何を作り何を食べていたかを地域の長老に聞き、小学校の図書館、民俗館などを回り丁寧に調べます。それが1、2の内容です。

生産を取り巻く状況

2008年にはじめた調査が2010年に完了し、区長をはじめ多くの人に発表しました。「是非、内藤とうがらしの復活を!」と求める人が多く、内藤とうがらし復活、普及のプロジェクトが発足し、早速「内藤とうがらし」の種を探しに全国の関係者を訪問しました。一年かけようやく種を発見し、数粒の種を三年かけ隔離選抜育成法で固定種にし、結果、数粒の種が何万粒を作り、これがこれからの「内藤とうがらし」の種(原種)になりました。この結果2013年、JA東京中央会の伝統の江戸東京野菜として登録され、現在「内藤とうがらし」の生産は都内の農家10軒と契約栽培をしています。毎年プロジェクトから農家に種を渡し、姿形を一律に整えています。

2013年から区内の小学校の総合学習として採用してもらい4年生が一年間「内藤とうがらし」の歴史、栽培、食育、加工品作り、地域との交流など学校独自の展開を実施。年一回、採用学校が一堂に集まり活動の発表会を行っています。(新宿とうがらしサミット)

高校、大学は「内藤とうがらし」をテーマに美味しさの科学、旨味分析、食育、学校と地域を繋ぐイベントなど積極的な活動を実施しています。

・地域の商店街とは美化運動の一環にと「内藤とうがらし」のプランター栽培を街路に置き地域の話題になっています。
・飲食店、レストランでは地元の食材として「内藤とうがらし」を利用する店が多数あります。
・毎年春と秋に「内藤とうがらしフェア」を開催しています。大手百貨店伊勢丹、高島屋、小田急や老舗の専門店が参加して「内藤とうがらし」を使った商品を販売しています。
・2018年に特許庁の地域団体商標に登録、「内藤とうがらし」が名実ともに新宿の地域ブランドとして確立しました。
☆今後はスローフード協会と連動し、国内の方々、海外の皆さんと交流を行い、美味しさの共有をしたいと思っています。
※新宿のお土産に
※区民が「内藤とうがらし」苗を家庭で栽培し、食、装飾など楽しんでいる。(毎年5千本配布)
※内藤とうがらし×SDGs
※JR新宿駅の記念スタンプのデザインに「内藤とうがらし」が採用され、話題になっています。

このように、数々の活動を通して、「内藤とうがらしプロジェクト」が大手百貨店、老舗、飲食店、商店街などと繋がり、内藤とうがらしを活用した様々な商品も生まれています。また、福祉や教育機関、観光分野との連携も広がっており、一度消滅した種が再び広がる取り組みのロールモデル的存在になっています。

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