<アメリカ水産資源の持続的利用の視察>
2018年3月18日から22日にかけて、スローフードユースのメンバーの一人(今井)が、サンフランシスコで開催された、アメリカ水産資源の持続的利用のワークショップ及び関連団体とのミーティングに参加してきました。
同行メンバーは、スローフード日本協会代表理事の伊江さん、大日本水産会ー国際・輸出促進部の岡本さん、沖縄県伊江島の漁業組合代表の八前さん、100年続くお寿司屋さんー松乃鮨4代目の手塚さんでした。
これから数回にわたって、感じたことなどをレポートしていきますので、お付き合いいただけると幸いです!
①「Seafood Watch」とミーティング
【シーフード・ウォッチとは】
これは、サンフランシスコにあるモントレーベイ水族館が行っているプログラムです。目的は、美しい海を未来に残していくこと。そのために、持続可能な方法で獲られた(育てられた)魚介類を、消費者や企業が選べるように、様々な活動をしています。
(参考:https://www.seafoodwatch.org)
【発信方法】
魚介類を
・緑( 管理が行き届いているので、買ってほしい )
・黄(管理や漁獲方法の一部に懸念があるので、考えて買ってほしい)
・赤(環境を壊す可能性が高いので、買わないでほしい)
の3つに分類し、紙媒体やアプリで発信しています。例えば日本のアワビは赤に分類されています。
紙媒体は3つ折りの手のひらサイズ。いつでも持ち歩くことができます。アプリではなんと5600万種類の魚介類が上記の3つに分類されています。200万回以上もダウンロードされています(過去のデータなので、現在はもっと多いそうです)。
日本語バージョンがないことが残念です。
【変わった学びの場】
水族館の中には「シーフードレストラン」というバーチャル体験コーナーがあります(写真あり)。好きなメニューを押すと、画面の中でシェフが作ってくれるのですが、
赤に分類された魚介類を頼んでしまうと、シェフもウェイターも画面の中で怒ります。「こんなのばっかり注文するから、魚がいなくなっちまうんだ!」といった具合に。
なかなかインパクトのあるコーナーでした。
【アメリカと日本の漁業における違い】
アメリカには日本でいう漁業組合がありません。そのため、日本では漁業権が組合に渡されるのに対し、アメリカでは漁業権が個人に渡されます。また、少し不思議ですが、例えばモントレーの人が得た漁業権は西海岸全てに適用されます。つまり、適用範囲が広いのです。逆に、アラスカの人がモントレーで魚を獲り、アラスカまで持ち帰って市場に出すとアラスカ産という扱いになるので、地域の資源が本来の地域に還元されづらくなってしまいます。
この違いは、環境にも大きな影響をもたらします。日本では、漁師さんは漁業組合に所属していることもあり、基本的にその海から移動することはあまり考えません。そのため、もしも乱獲をすれば、数年後資源がなくなり、自分たちが困ることになるので、海を守ろうという意識が芽生えます、
一方アメリカでは、漁業権が個人にあるため、モントレーで魚が獲れなくなっても、他の漁場へ移れば漁を続けられるので、海を守るという意識が働きづらいのです。もちろん資源を守ろうとしている漁師さんも沢山います!
【シーフード・ウォッチの活動の意義】
漁師さんの環境への意識が向きづらいアメリカだからこそ、シーフード・ウォッチは消費者教育に力を入れています。消費者が環境に良いものを選ぶようになれば、漁師さんの意識も変わってきます。
また、赤や黄に認定された魚介類を獲っている漁師さんらが、努力を重ね、良いランクに移行された例も多くあるそう。ブラジル、ベトナム、タイでは政府と協力してプロジェクトが進んでいます。
今、シーフード・ウォッチの方々はシェフ教育が大切だと感じています。アメリカでは、家庭で調理されている魚介類は全体のたった25%です。だからこそ、シェフの方々にこそこの現状を知ってもらいたいと考えています。
【まとめ】
ミーティングでは、お互いの国の漁業の現状や問題点について話し、考えました。漁業組合という存在など、日本の漁業について知りたいと思ってくださっていることがとても伝わってきました。
「漁獲量の多い日本でも、シーフード・ウォッチの活動が広がり、成功事例をつくることができれば、環境保護への可能性が一歩広がる。そのためにはもっと対話をしていくことが必要です。今後もやり取りをし続けていきましょう!」という結論に至りました。
【おまけ】
モントレー水族館には、福島県南東部、小名浜の子供たちが描いた畑がたくさん飾ってありました。こんなところにも温かい絆があるのだと、嬉しくなりました。
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