土気からし菜

2021/5/17

登録日 2021年3月31日
生産地 千葉県千葉市土気
生産者 生産者 土気からし菜レディース他
生産量 生産量約4304kg(2020年度)
主な調理方法 漬物、土気からし菜の粒マスタード
食材の特徴

農民の暮らしの知恵として地域に根差し今日まで残ってきた土気からし菜。

土気からし菜の産地である千葉市土気地区は、東京から東、房総半島の中央部の下総台地南部の分水界に位置し、周囲に比べ標高が高く森林に囲まれた地域です。土気城址付近では、畑作を中心に農業が盛んで、特に土物といわれるダイコン、ゴボウ、ニンジンなどが作られています。

その中でも土気在来のカラシナは、300年以上前から、それぞれの農家が代々自家採種により、種を守り、栽培を続けてきたと言われている貴重な伝統野菜です。 辛さから害虫の忌避効果が高いと言われており、特に土気地区は温暖な下総台地の中でも標高が高く、比較的寒暖の差が激しい風土が、独特の辛味、風味を醸し出します。辛さが自慢の土気からし菜は晩秋に種を播き、千葉の早春の味として新芽を漬物にしたものが今日まで愛されてきました。食べ方としてはその特徴的な辛みを活かした農家手づくりの漬物が定番ですが、房総太巻き寿司の材料としても使われています。また、種子はオリエンタルマスタードといい、和からしの原材料でもあります。

歴史的、食文化的位置づけ

土気地区(千葉市緑区)は、古くは戦国時代の末期に上総酒井氏が周辺地域を治め城を構えた歴史のある地域であり、江戸時代は、太平洋の海産物や房総の野菜を江戸の都に運ぶ交通の要所(土気往還)として栄えました。

カラシナ自体は、千葉県全域で栽培されていたと考えらえますが、年貢等としておさめる野菜ではなく、あくまで緑肥としての使用がメインで、畑作が土気城址付近で盛んだった土もの畑作の緑肥として用いられてきたと江戸時代の農事書に記録があります。早春に新芽を収穫したら、残りを畑にすき込むことで緑肥としていたそうです。また、土壌を改良する目的で作物と作物の連作障害を避けるために合間にも植えられてきました。

一部漬物用として自家消費したりしていた様ですが、土気のカラシナは、緑肥や漬物の他に九十九里の魚との物々交換や東京までの行商に活用されていたりと、農家の生活に密着した地域の名産野菜だったと言われています。

生産を取り巻く状況

土気からし菜の生産は現在、土気地区在来の種及び千葉市農政センターが保存した「土気からし菜」の種のみを使用し、生産地は「土気地区(旧土気町周辺)」に限定されています。
千葉市農政課によると、土気伝統野菜として系統保存の観点から種の販売はされておらず、他地域で生産されたものは「土気からし菜」という名を冠せない事になっています。また、在来の土気からし菜を栽培されている土気地区の農家さんの中で、”土気からし菜レディース(土気からし菜出荷組合)”と呼ばれる生産者の組合があります。平成29年2月に結成され、現在は8名で活動し、土気からし菜漬物教室の講師なども行い、食文化の伝承も行われています。

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