トゥレプ

2021/5/17

登録日 2021年3月31日
生産地 本州中部以北・北海道
生産者・生産量 野生植物
主な調理方法 根をすりつぶして水にさらし、デンプン質を分離させて料理に使用する。
食材の特徴

アイヌ語で「溶けさせるもの」という意味で、日本語名はユリ科ウバユリ属のオオウバユリです。本州の中部以北、北海道に分布し、やや湿り気のある林内に自生しています。使われるのは地中にある乳白色の球根の部分です。7月頃、雌花の球根を収穫し、鱗片を一枚づつ剥がし、細かく刻みすりつぶします。それを水にさらし、浮遊物・デンプンを分離させ、粉にして料理に使われます。味は百合根に似ています。

歴史的、食文化的位置づけ

トゥレプはアイヌの食文化の中でもとりわけ重要な位置を占めていたといわれています。旧暦4月をアイヌ語で「モキウタ」(すこしばかりウバユリを掘る月)、5月を「シキウタ」(本格的にウバユリを掘る月)と呼び、この時期に女性達はサラニㇷ゚(編み袋)と掘り棒を手に山野を廻り、トゥレプの球根を集めました。すりつぶしたトゥレプを水にさらして分離させ、一番底に沈んだ澱粉は一番粉と呼び、腹痛や下痢止めの薬用として使います。繊維やでんぷんカスの混じった二番粉は丸めてフキの葉で包み、発酵・乾燥させて冬期間の保存食としました。食べるときは砕いたものを水で戻し、お粥に入れたりして食べました。食べ物の少ない冬のための貴重な保存食です。

生産を取り巻く状況

川辺に自生していましたが、人工的に湿地を都市開発によりアスファルト舗装したことにより、だんだんと自生できる環境がすくなくなってきています。北海道札幌市北区の屯田防風林では、アイヌ文化の保護の意味合いもあって、数ヶ所にトゥレプの保護区域が設けられていますが、札幌市内に自生している様子はほぼ見られなくなりました。

写真提供:亜璃西社

関連記事