国連食糧システムサミットへのボイコット 〜間違った方向に向かっている列車に飛び乗ることはできない〜

2021/7/6

2021年9月に開催される国連食料システムサミット(UN FSS)は、17のSDGs(持続可能な開発目標)すべての進捗を実現するための具体行動を開始することを目的としています。SDGsの各目標のすべてが、スローフードがスローガンとして掲げ続けている、「おいしい、きれい、ただしい」食料システムと、ある程度関連していることから、UNFSSは非常に重要なサミットといえます。しかし、スローフードは、Civil Society Mechanism(市民社会メカニズム=CSM)をはじめとする世界の多くの市民社会団体とともに、企業の過度な影響力、人権尊重の視点の欠如、プロセスの不透明性などの一連の懸念から、サミットへの正式な関与をボイコットすることを決定しました。

下記のリンクにあるテッラ・マードレ・フードトークでは、CSMのメンバーであるアルバータ・ゲラが、懸念について説明しています。また、国連世界食料安全保障委員会に対してCSMが、スローフードを含む多くの市民社会団体とともに、①サミットに異議を唱え、②企業の取り込みを非難し、③アグロエコロジーや農民の権利の尊重を含む、すべての人の食料の権利を確保するための解決策を提案するために、現在どのような活動を行っているかについても説明しています。
最も影響を受けている・受けるであろう人々の声は、UNFSSのプロセスに効果的に含まれていません。その結果、プロセスの正当性とサミットの成果も強く損なわれています。

スローフードはUN FSSに向けたプロセスに積極的に関与するよう招かれていましたが、UN FSS事務局とのやり取りの後、正式な関与を辞退することを決定しました。これは、サミットの準備が、権利に基づいた、合法的で包括的な多国間の政策プロセスに対応していないという点で、私たちの懸念が高まったことによるものです。具体的な懸念は以下の通りです。

● 今回のサミットは、万人のための十分な食料への権利を実現することを目的とした、革新的で包括的かつ参加型のガバナンスメカニズムの構築につながった過去の世界食料サミットの功績を引き継いでいません。

● 過去の食料サミットは政府間の決定によって開催されたのに対し、今回のサミットは、国連事務総長が世界経済フォーラムとのパートナーシップ協定に署名した直後に、国連事務総長の一方的な決定によって開催されました。

● また、「アフリカ緑の革命同盟(AGRA)」の現会長であるアグネス・カリバタ氏が特使に任命されたことや、民間企業に役割が与えられたことは、企業がサミットに過度な影響を与えていることを裏付けています。

● サミットは、政府を義務者として、人々を権利者として認識する代わりに、これらのアクターのパワー・アンバランス、利益相反、説明責任の欠如を考慮することなく、企業セクターが重要な役割を果たす新しいマルチステークホルダー型のガバナンスを推進しています。

スローフードは、UN FSS事務局と直接議論を重ね、500以上の団体が署名した国連事務総長宛の書簡や、200以上の団体が署名した世界食料安全保障委員会の議長宛の書簡で、UN FSSに対する懸念を表明してきましたが、彼らの側から有効な回答は得られませんでした。そこで私たちは、フードシステムの真の変革と、人と地球の最大の命題への再調整という共通のビジョンを持つCSMが立ち上げた、「市民社会と先住民の関与のためのオープンコール」に参加することを決めました。

“UN FSSの基本的な前提は、食料の多次元的な性質(社会的、経済的、生態的、文化的、政治的)を認識し、食料主権(人民、国家、国がそれぞれの食料システムを定義する権利)を主張し、食料システムを市場ベースの解決策に委ねることのできない公共の共有物として取り戻す、ホリスティックでシステマティックなアプローチを育成することであるべきである。”

“…このような[UN FSSの]背景に反対し、私たちは、食料とその生活に欠かせない他の領域との複数のつながりに関わる運動、ネットワーク、組織にこの動きに参加することを呼びかけています。人権を損ない、領土やコミュニティを破壊し、私利私欲のために正当な民主的空間を奪おうとする企業の取り込みを糾弾し、UN FSSに異議を唱えるための集団的プロセスの構築に参加をしてください..(中略)…その意図は、UN FSSがもたらす脅威に対抗する勢力として1つにまとまること、またUN FSSに限らない、他の国際的な政策意思決定機関が企業による買収やポピュリスト・ナショナリズムの破壊的な攻撃によって同様に脅かされている事態の収束を図ることにあります。 “ –市民社会と先住民の関与のためのオープンコール より抜粋

私たちは、不健康で、不公正で、持続不可能な食料システムから、人権に基づき、食料主権とアグロエコロジーを中心に形成された食料システムへと根本的に変革する必要性と、それを実現する方法についての議論が、これまで以上に緊急に求められていると考えています。しかし、私たちは、サミットが解決策を見出すための適切なテーブルであるかどうかについては懐疑的です。なぜなら、権力、参加、アカウンタビリティ(サミットの決定事項を誰がどのようにして実行するのか)など、非常に多くの問題点が未解決のままだからです。

このことから、私たちスローフードは、世界中の草の根の活動やテッラ・マードレなどのイベントを通じて、飢餓や栄養失調、生態系の破壊の影響を最も受けている人々の声を聞き続け、CSMや他の団体が組織する市民の結集に参加していることを、表明します。

 

<参考・情報>

  1. 国連食料システムサミット2021〜民主主義の解体とフードシステムの企業支配の再設定〜
  2. 国連食料システムサミットに対応するための市民社会および先住民の参加の呼びかけ
  3. 世界の食料システムを変革する – ホセ・グラツィアーノ・ダ・シルヴァが語る「ゼロ・ハンガー」への道
  4. CSMから世界食料安全保障委員会の議長宛の書簡

元記事リンク
https://www.slowfood.com/un-food-systems-summit-we-cannot-jump-onto-a-train-that-is-heading-in-the-wrong-direction/

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