チデークニ

2021/5/17

登録日 2021年5月10日
生産地 主に中城村、渡名喜村だが、沖縄全域で少量の生産が行われている
生産量 沖縄全域からの中央卸売市場取扱量:約27t(2020年)
生産時期 暑い夏に植え、気温が15〜20度に下がる冬ごろに収穫する
主な調理方法 薬膳として重宝されており、煮物や汁物に適している。代表的な料理は「チムシンジ」:チム(豚の肝)と島にんじんやニンニクなどを煎じた汁もの
食材の特徴

30cmほどの細長い黄色いニンジンで、日本国内に現存する黄色系東洋ニンジンは、沖縄の島ニンジンのみと言われています。

沖縄では、「黄色い大根」という意味で、チデークニと呼ばれています。
暑さに強く、湿度を好むため、沖縄の気候が栽培に適していると言われています。

栽培方法としては、一般に広く扱われる西洋ニンジンと同様ですが、細長いため、盛り土を高くする必要があります。
また、収穫の際は、農具で傷つけたり途中で折れてしまわない様に、専用の二股の堀機を使用します。沖縄のチデークニ(島ニンジン)生産者は、自身で使いやすいサイズの堀機を自作したり特注するのが一般的です。
西洋ニンジンと比べると、味が薄いと言われていますが、風味豊かで、炒めもの・汁物・サラダなど、様々な料理に適しています。

歴史的、食文化的位置づけ

御前本草という1832年に編纂された本草学(中国で発達した医療に関する学問)が、琉球における島ニンジンの初記載と考えられています。

琉球には古くから「医食同源」という言葉があり、「食事は、生命を養い健康を保つだけでなく、病気を治す薬の役割を果たす」という、食生活に対する意識を示しています。その中でも「クスイムン」と呼ばれる薬膳料理があり、「チムシンジ」はその代表格です。豚レバーの汁物と言い換えることもできる料理ですが、そのチムシンジの食材として欠かせないのがチデークニです。昔から薬膳として重宝されていました。

生産を取り巻く状況

沖縄全域で生産は行われていますが、県内生産量の7割が、種の保存にも力を入れている中城村でつくられています。
しかし、中城村だけで、1990年には160tあった生産も、2018年には27tまで落ち込み、生産が2割以下になってしまっています。また、県内生産量2位を誇る渡名喜村でも、過去10年間で生産量は4分の1まで減少しています。
(渡名喜村には、30年ほど前に中城村のチデークニの種が沖縄県の南部農業改良普及センターから分けられたと言われています。)
乾燥に弱く、日光にあたると変色も進んでしまうことから、棚持ちが悪いということで、スーパーでの取り扱いが少ないことと、それにより西洋ニンジンのオレンジが主流となってしまったため、黄色いニンジンに対し消費者の抵抗感が出てしまっていることが、生産を拡大するにあたっての課題とされています。

また、沖縄は台風の被害が多く、大型の台風が来ると生産ができないなどの理由や、生産者の高齢化と減少も大きな課題となっています。

こうした状況や食文化を未来の世代に伝えるため、中城村では現在、村役場と中学校が協力し、中学生が栽培を試みるなどして食育にも取り組んでいます。

 

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