カーラベ
認定日 | 2020年8月31日 |
生産地 | 岐阜県⾼⼭市朝⽇町、飛騨市河合町 |
生産者・生産量 | 現在、商用に生産されていることは確認できておらず、飛騨高山高校の農業科にて保護活動として2Rほど栽培されている。 |
主な調理方法 | 熱湯で湯がいてそばがきのように食されたり、団子にして食される |
問合せ先 | スローフード飛騨高山 |
雑草のオヒシバ穂のような形状をした雑穀、ヒエの⼀種です。正式名称はシコクビエ(学名Eleusine coracana Gaertn・英名Finger millet)で、東アフリカのエチオピアからウガンダにかけた高原地帯で作物化され、日本には縄文時代晩期に中国南部を経て伝えられたとされています。ヒエやアワと同様に、稲作以前から栽培されたと考えられていますが、ヒエやアワのように主食にならなかったため、栽培は大きく広がっておらず、甲信越・中部・四国の中山間地域でユニークな地方名で細々と栽培されてきています。
飛騨高山地域では、「カーラベ(カワラベ、カラベ)」と呼ばれ、地域に代々伝わり、かつてはこの地域で当たり前のように⾷されていたものですが、現在ほぼ消滅状態です。
各地で編纂された歴史書や風土記のなかに、「カーラベ」「カラベ」「カワラベ」「チョウセンビエ」「リュウソウビエ」「マタビエ」「ダンゴビエ」など、様々な名前で記載され、栽培法や⾷べ⽅も様々なシコクビエの歴史が紐とかれています。つまり、これだけ、かつては⾶騨地域全体にその栽培が根付くものであったにも関わらず、現在は、ほぼ消滅している在来品種の雑穀といえます。
カーラベの粉は普通、湯がいて食されます。ソバの粉はぬるい湯で掻いても⼗分食べることができますが、カーラベの場合、⽣煮えは下痢をするといわれているため、2段掻きという⽅法で、はじめ少量の熱湯で⼀気に掻いてよくこねた上、さらに熱湯を⼊れて、掻き上げられます。これに⽣タマリや砂糖などを付けて⾷べるのが、地域で一番一般的な食べ方でした。またカーラベ団⼦は、粉を熱湯でよくこねてから団⼦にし、中に⼩⾖餡を⼊れたりしたようです。
収穫量がヒエの倍以上採れたことから、「シンショウナオシ」(⾝上直し) とか、粉にして⾷べると普通のヒエより美味しいために「コソダテ」(⼦育て)とも呼ばれたとも⾔われるようで、地域に必要な穀物でした。また「あがりこびる=⾷前の⼀番疲労感が出るであろう⼣⾷前」に⾷するという記述もあり、当時は⽣産量も多かったのではと推測されます。
また、カラベは粉にすると2割も嵩が増えるので、カラベの増量を不思議なものと思い、これを弘法様のご加護のあるヒエという意味で「コウボウビエ」と呼んだという記述もあります。
雑穀「カーラベ」や、その粉から作られる「カーラベ団⼦」は、現在、ほぼ生産者がいない状況です。
かつて⾶騨地域において雑穀類の栽培は盛んであったが、現在の雑穀類の栽培はソバとエゴマを除いてはほとんど無くなってしまったと⾔われています。現在でも⾶騨地域は農業が盛んな地域ですが、かつては⼭間部の⼩規模な焼畑を中⼼に、雑穀の栽培が⾏われていたことが各地で編纂された歴史書からうかがえます。しかし今では雑穀栽培はほとんど無くなっています。これは、⾼標⾼地域まで農地の造成が⾏われ、⽔稲の品種や栽培技術の改良が進んだことが理由の⼀つと推測されます。さらに雑穀栽培はほとんどが⼿作業なため、⽣産を中⽌したという⽣産者の意⾒も多くあります。
⾼⼭市朝⽇町⻄洞で、農業者から「名前は忘れたけれど昔の雑穀で作った団⼦を配っている農業者がいる」という情報を元に、その農業者が栽培されるカーラベとカーラベ団⼦の存在がわかり、そこから地道な保護活動が続けられています。現在把握できている生産状況は、朝日村の中で細々と栽培が続けられているものと、飛騨高山高校農業科の学生の活動として、学校の敷地内に2アールほど作付けされているもののみ。
このように、地域から消滅しそうな実情を知り、現在は、⾼⼭市朝⽇町の「道の駅⾶騨朝⽇村」にて、その復刻を⽬指す活動の⼀環で作られることとなった「カーラベ」その物や、その粉末をうどんにしたものが、収穫時期には販売されているようですが、その量はごくわずかです。