\日本各地の味、”食の世界遺産”「味の箱船」に登録/
世界で5,000以上登録されている”食の世界遺産”「味の箱船」に、
2年ぶりに日本各地から、9つの食材が同時登録されます。
今回登録される9品はこちら!
内藤とうがらし (東京都新宿区) 高原山椒 (岐阜県高山市) カーラべ (岐阜県高山市/飛騨市) 花餅 (岐阜県高山市) 種蔵紅かぶ (岐阜県飛騨市) 伊豆田子節 (静岡県西伊豆町) 鰹色利 (静岡県西伊豆町) 伊勢いも (三重県多気町) 阿波晩茶 (徳島県上勝町/那賀町)
一体どんな魅力の詰まった食たちなのか、、、北から順に簡単にご紹介させて頂きます!
まずは、東京都新宿区から「内藤とうがらし」。
伝統の「江戸東京野菜」としても認定を受けている内藤とうがらしは、 江戸時代の宿場町、内藤新宿(今の新宿のエリア)で栽培が盛んだったと言います。 内藤とうがらしは、江戸時代に大流行した蕎麦の薬味として、食文化デビューを果たしたそうです。 唐辛子の需要も増し、換金のしやすさの後押しもあり、生産者が次第に増加していった新宿は、 唐辛子の一大産地として栄えたのですが、宅地化および鷹の爪品種の台頭もあり、 畑の減少(産地が西へ移動)とともに、 内藤とうがらしは日本の食から400年もの間、姿を消してしまったのです。 2008年そんな内藤とうがらしを歴史文化から発見。 2010年に内藤とうがらしを復活に導いた「内藤とうがらしプロジェクト」により、 今回、味の箱船へと登録して頂きました! プロジェクトや内藤とうがらしの詳しい歴史は、こちらからご覧ください。
続いて、岐阜県の飛騨地域からは、なんと4つです!
「高原山椒」「花もち」「種蔵紅かぶ」「カーラベ」 高原山椒は、岐阜県高山市奥飛騨温泉郷(旧 上宝村)標高約800mで栽培される山椒の葉と実で、 江戸時代には徳川将軍に献上されるほど優良な産品だったと言われています。 時季には、京都から出張所を構え仕入れるほど評価されていた山椒でしたが、 山間の小さな地域の産品だったため、生産は拡大されず原料からの供給にとどまったようです。 高い標高が天敵であるアゲハ蝶の幼虫を寄せ付けず、今も有機栽培が続けられています。 花もちは、全国的には、餅花(もちばな)などと呼ばれ、⽇本の⼀部地域で正⽉(特に⼩正⽉)に、ヌルデ・エノキ・ヤナギなどの⽊に⼩さく切った餅や団⼦をさして飾るものです。 ここ⾶騨地域(主に⾼⼭市・⾶騨市)においては、雪深い地⽅であることから、 正⽉を彩る花もなく、農家(昔ながらの⺠家)は⽇中でも暗く、⼦どもたちを喜ばせるためにと 先⼈達が考え出し命名した呼称のようです。 種蔵紅かぶは、飛騨市宮川町種蔵(旧吉城郡宮川村)で栽培され、種蔵紅かぶという名前からも 分かるように、古くから種蔵の地域内で自家採取による栽培が続けられてきました。 昔は、宮川村でも焼畑をしており、夏頃に畑を焼いた後、紅かぶを作付けしていました。 「カブラなぎ」とはこのように焼畑(飛騨地方の言葉ではなぎ畑)を行った直後に かぶを栽培することを言い、焼畑後の灰を入れることにより、 葉が短く・根が大きい質の良い紅かぶが収穫できたといいます。 種蔵の地域でも焼畑が行われなくなったことから、紅かぶの生産は激減しましたが、 種を途絶えさせまいと栽培が続けられてきました。 高原山椒も、花もちも、種蔵紅かぶも、地域の過疎化と生産者の高齢化が進み、 消失の危機と隣り合わせにあります。 カーラベは、ヒエの⼀種で、正式名称はシコクビエと言います。 東アフリカのエチオピアからウガンダにかけた高原地帯で作物化され、 日本には縄文時代晩期に中国南部を経て伝えられたとされています。 飛騨高山地域では、「カーラベ(カワラベ、カラベ)」と呼ばれ、 地域に代々伝わり、かつてはこの地域で当たり前のように⾷されていたと言われていますが、 今ではこの地域の雑穀栽培はほとんど無くなってしまっています。 栽培がほとんど手作業で行われ、大変な時間と労働が必要だったことと、地域の農地造成が進み、 水稲栽培に転換してしまったことが起因しているのではないかと考えられています。 地域の食文化を守ろうと、岐阜県立飛騨高山高等学校の学生たちが、 栽培や商品開発に取り組んでいるそうです。 岐阜県飛騨市・高山市からの4品のより詳しい情報については、以下をご覧ください。 「高原山椒」「花もち」「種蔵紅かぶ」「カーラベ」
次に、静岡県賀茂郡⻄伊⾖町⽥⼦地区より「鰹色利」と「伊豆田子節」。
鰹色利は、カツオの濃縮旨味エキス で、カツオを使用した日本最古の液体調味料で、 約1300年以上前から作られていたそうです。 鰹の頭・中⾻・⾝を焦がさない様に、約5⽇間煮込んで濃縮させ、⽔あめ状の液体にします。 約300ℓからわずか約4~5ℓしかとれません。 当時の貴重な旨味調味料で、これを用いて魚・肉・野菜が味つけられていました。 しかし、同じ地区から登録されている「潮鰹(リンク)」と同様に、 約400年ほど前に中国などの大陸から味噌や醤油などの発酵調味料が伝わると、 鰹色利の製造や利用は激減し、今ではほんのわずかしか生産されていません。 伊豆田子節は、鰹節の最高峰「本枯れ鰹節」のひとつです。 300年前に確立された手火山式焙乾法という本枯れ鰹節の伝統製法を用いて製造され、 その製造工程は30以上あると言われています。 手作業で約半年の期間を経て丁寧に作りあげられる田子節は、 原魚の6分の1重さにまで凝縮されます。 鰹本来の旨味が味わえる、まさに最高級の本枯れ鰹節です。 削り節やインスタント出汁などの台頭により、手間隙かける田子節などは、 次第に生産量が減っていってしまいました。 西伊豆町田子地区にかつては40店舗程あった伝統製法の鰹節製造店は、 今では4店舗まで減少し、担い手不足にも悩まされています。 こちらから、より詳しい情報をご覧ください。「鰹色利」と「伊豆田子節」。
続いて、三重県中南勢地区より「伊勢いも」。
「畑のうなぎ」と呼ばれる程、クリーミーなコクがあり栄養価の高い伊勢いもは、ナガイモの仲間です。 一般的な長芋が長形や偏形の物が多いのに対し、伊勢いもはつくねいもというグループに属していて、 形状は塊形(ボール状)で、凸凹が多く、表皮は白いのが特徴です。 歴史は古く、古文書によれば享保4年に「山の芋」の記述が残っていることから江戸時代中期から 山芋として栽培されていたとみられます。親芋を頭上に頂くように子芋が大きく育つところから 「親孝行芋」の別名が有り、古来より婚礼や祝い事の贈り物に重宝され愛用されてたそうです。 連作障害による生産量の確保の難しさに加え、栽培面積の減少の課題に直面しています。 伊勢いもの詳細は、こちらからご覧ください。
最後に、徳島県上勝町・那賀町から「阿波晩茶」。
日本にたった4つしか残存していないと言われている乳酸菌発酵茶の1つである阿波晩茶。 茶葉を摘み取る時期が遅いことから”晩”茶と呼ばれる様になったと言われているようです。 ヤマチャと呼ばれる山に自生するお茶の木から茶葉を摘み、 お茶の製法は各生産者で少しずつ異なることから、 味や風味もバラエティに富んでいることも特徴的です。 生産者の高齢化と地域の過疎化が進み、 担い手が不足している状態が食文化の消失の懸念を募らせています。 また、阿波晩茶の製法を含む四国山地の発酵茶の製造技術は、 2018年3月8日に、「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」にも選択されています。 歴史やお茶の効能などは、こちらからご覧ください。
いかがでしたか?今回登録された9つの味の箱船。
一つ一つに、その地域の歴史や人の暮らしが色濃く反映されている、かけがえのない味の記憶だと感じます。
様々な理由で生産が減少してしまっているこれらの産品ですが、最も大きな壁は担い手不足。
「記録し発信する」ことで、より多くの人に届き、これをきっかけに「守る活動」に繋げ、
皆さんと一緒に”食の世界遺産”を次の世代にバトンを渡すことができれば幸いです。
地域にある、消えてしまいそうな食材や加工品、心当たりありましたら是非ご連絡ください。
日本の味の箱船 :https://slowfood-nippon.jp/what-we-do/ark-of-taste/
世界の味の箱船(英語) :https://www.fondazioneslowfood.com/en/ark-of-taste-slow-food/
味の箱船推薦フォーム :https://forms.gle/wvB7x77ZDZZBf4oU8
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